鳥の巣箱のように樹や花に囲まれる9年の歳月が育んだ家と庭
|設計|アトリエフルカワ一級建築士事務所
簡素で、シンプル、無駄がない。そんなイメージを「巣箱」という言葉に込めた。時を重ね、慈しんだ庭の木々は伸びやかに枝を広げる。竣工当時の初々しさが残る漆喰壁は丁寧な暮らしぶりを感じさせるが、無垢の床は色を深め、艶を増し、重ねた歳月を物語る。

レースフラワーやラベンダーが咲き乱れる前庭。樹の葉の背景に沈むチャコールグレーの板張りの家が、Kさんの住まいだ。
「鳥の巣箱のような家」を願って建てた家だと聞けば、慎ましやかな佇まいの意味がわかる。
ここは鎌倉駅から少し離れた静かなエリアで、東西を山に挟まれた南向きの傾斜地。
鎌倉につきものの湿気はあるものの、南から北へ常にそよそよと風が吹く恵まれた環境だ。人気エリアでたまたまこの土地に出会えたことは、Kさん夫妻にとって幸運そのものだった。


家の完成からは、すでに9年の歳月が流れている。当時高校生だった息子は、大学時代にいったん家を離れたが、社会人になり再び一緒に暮らすようになった。在宅で仕事をする時間が増えた夫は、ロフトにワークスペースを新設し、快適に仕事をこなしている。






木はまだ小さく土は剥き出しで、家が裸で晒されているような気恥ずかしさがあったという。カラマツの外壁は今とはまったく違う白木の色をしていた。この外壁は、建築家の古川泰司さんがブログにアップした日本海沿岸の木塀を見て希望したもの。メンテナンスに手間が掛からず、耐久性のある素材だ。………<続きや図面は書籍でお楽しみください!『木の家を楽しむ』全国の書店やamazon・楽天などで発売中!>