『“山”と“谷”を楽しむ建築家の人生』について

本書は、経済成長の勢いが年々弱まり、不安的な雇用形態の割合が増えていくなかで、人生に対して漠然とした不安を抱える方、とくに設計に対して興味があるのに二の足を踏んでしまうという建築学生に何を伝えるべきかと考え、山﨑さん、西田さん、後藤さんらと企画を立ち上げました。

立ち上げ当初、学生や若い建築関係者にヒアリングを行ったところ、アトリエに勤めてどれくらい忙しいか、プライベートを楽しめる時間を持てるのか、独立した時収入はどれくらいだったか、食べていけるくらい稼げるのか、仕事がないときはどんな心情だったか、結婚はできるのかなど…。そんな生々しい人生の話を建築家に聞きたいという意見が出ました。

 本書ではそのような声をもとに、7人の建築家へ、人生の“山”や“谷”についてお聞きするべくインタビューを行いました。
インタビュイは直球の質問に苦笑されつつも、若かりし頃の失敗や鬱々としていた頃についてなど、さまざまなエピソードを話してくれました。ただ“谷”のはずなのに、ご本人はあまり“谷”と感じていないところが、建築家ならではタフさなのかもしれません。

好奇心が旺盛でやりたいことがたくさんあり、色々試したのちに、やはり建築に進むことに決めたという永山さん。やりたいと思うと突っ走ってしまう性格ながら、一方で出会いを大切に繋いできた鈴野さん。事務所をクビになったり、独立しても仕事がなかったりとまさに人生の深い“谷”を経験しながらも、市場リサーチを重ねて独自の職能を確立した佐久間さん。不安だからこそ色々試し、純粋に良い建築ができる環境をつくってきたという谷尻さん。「目の前の仕事を一生懸命やれば、必ず次の仕事が来る」という父親の言葉に励まされたという小堀さん。建築について語れる友人のいない孤独な20代を過ごしながら、いきなり大きな賞を受賞した五十嵐さん。結婚して食べていくためにまず左官職人になったという森田さん。

7本のインタビューから、それぞれの才能と性格を生かしながら仕事につなげ、自分流の戦略で人生を渡っていく姿を浮き彫りにすることができました。

建築家たちのこのような“野生的な”生き方はそのまま真似することは難しいかもしれません。ただこのエッセンスが、どんな環境にいる方にもしたたかに、戦略的に、そしてのびのびと、やりたい仕事を手にするための一助となれば幸いです。

『“山”と“谷”を楽しむ建築家の人生』

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